各種スペクトルデータ解析
■空から色を“観る”
物質は材質や状態の違いにより異なった反射特性を示します。反射特性とは、表面に受けた光をはね返す割合のことで、波長ごとに異なります。その割合は水や植物、土といった物質の違いにより異なった特徴を持っています。また同じ物質でも表面の状態が異なると、異なった反射特性を示します。
例えば植物の葉は、植物色素の特性により緑色と近赤外域の反射が選択的に強くなります。このうち人間の目では近赤外域の光は見ることができないため、緑の波長の光が他の波長の光に比べ強く見えます。このため人間の目には植物の葉は緑と感じられます。
こうした光の強さの違いを、上空から機械の目を通して“観る”ことで、反射特性の違いを数字の大きさで表現することができます。また機械の目は、人間の目では見えない近赤外域の波長を捉えることができたり、赤、青、緑といった大きな分け方ではなく、“赤っぽい緑”や“緑っぽい青”といったより細かな色の違いを区分できるたりするため、高精度に色の違いを捉えることができます。この色の違いの情報を現地の調査結果とともに解析することにより、様々な分野で応用することができます。
技術・機材
■CASI-3(ハイパースペクトラルイメージャー)
■AZM(マルチスペクトラルスキャナ)
■UCXp WA(デジタルカメラ)
利用分野
■植生調査
■農作物等の生育調査
■枯死木調査
■ヒートアイランド調査
■水温調査
■水質調査
■土地利用状況調査
■熱異常調査
■コメの食味調査
皆さんの食卓にあがるお米は、品種の違いやその年の作柄により、おいしさにばらつきがあります。そのおいしさはお米の成分に関係しており、この成分の違いを収穫前に知ることで、おいしいお米だけを選り分けて収穫することができます。またその年のお米の出来不出来を各農家の方々に知ってもらうことで、来年の米づくりの参考としてもらうための資料として活用することができます。
実際にお米のおいしさは、玄米に含まれるタンパク質の含有率と関連があり、また、そのタンパク質の含有率により、稲の葉の色に変化が生じることも知られています。そこで、収穫前の圃場を上空から観測することで、コメに含まれるタンパク質の含有率の分布を推定することができます。
CASI-3による調査では、圃場を一筆単位でこれを捉えることができ、また圃場内の生育むらの状態をも確認することができます。これにより、細やかな収穫管理や営農指導を行うことができます
■植生調査/マツ・ナラ枯れ調査
日本の国土の66%は森林に覆われており、山地の保全や豊かな景観を維持する上で、森林の維持管理は重要です。森林を管理するにはそれを構成する樹木の種類や状態を把握することが必要となります。画像解析による植生分類は、樹種ごとに異なる特徴を示す反射特性を上空から捉え、統計的手法により同じ特徴を持つ領域に分割することで樹種や林相の区域を推定します。
また複数時期に観測を行うことで、季節で異なる樹木の状態を的確に捉え、季節変化に伴う状態の差を解析することにより、より高精度に林相分類や樹種分類を行うことができます
CASI-3による調査では、地上解像度が高いことから、小さな群落単位の林相も精度良く把握することができ、観測条件によっては単木単位を認識することも可能です。また、季節要求性の高い植生の調査において、観測日や時刻が限られた人工衛星による観測に比べ、気象状況を確認しながら観測時間帯を選択できる利点を活かし、わずかな晴れ間のチャンスを逃さず観測することができます。
また、単木単位の詳細な調査が可能である利点を活かし、近年全国的な広がりを見せているマツ枯れやナラ枯れの調査に利用されています。マツ枯れやナラ枯れは、特定の樹木が一度に多く枯れてしまうため、地域によっては斜面全体が枯れてしまうなど、景観や治山上問題となる場合があります。
これらが多く発生する恐れのある場所はマツやコナラなどが優先した林相であることが想定されるため、航空機による詳細な調査を実施することで被害の発生する恐れのある場所を事前に把握し、防除すべき範囲を絞り込む事ができます。同時に、現況のマツ枯れやナラ枯れの発生状況を単木単位で詳細に確認することができ、伐倒駆除や薬剤注入・散布を計画するための資料として役立てられます。
■土地被覆分類図
土地被覆分類図は、上空から見た場合に地表面を覆う地物や土地の利用状況を表した図です。コンクリートやアスファルトといった地表面を構成する物質の色を、統計的に区分けすることで多くのカテゴリーに分類することができます。
AZMやCASI-3では人工衛星に比べ高い解像度で地上を捉えることができるため、より細かな地目を識別する事ができます。例えば地上解像度を1.5m/画素で取得された画像による解析例では、人工衛星データでは視認が困難な細い道路や戸別の建物が視認可能であり、熱環境調査などで有効に活用されています。
■地表面温度調査/都市熱環境調査
AZMの熱赤外センサにより地表面の温度分布状況を調査することができます。AZMの熱赤外センサは、測定温度レンジを常温と高温の二段階に変更でき、また2バンド保有すうる熱センサで同時に別々の温度レンジで観測することができるため、例えば火山における観測では火口内高温域の温度分布状況と、常温付近の山体の温度分布状況を、一度の飛行で高精度に観測することができます。さらに、同時に可視~近赤外域の波長帯域の情報も取得できるため、山体表面の植生分布なども同時に取得できます。
熱赤外センサによる温度分布の把握は都市域でも有効で、ヒートアイランド調査における建物や道路面の表面温度分布の把握に有効であり、同時に緑被分布の状況も面的に把握できるため、効率的に調査を行うことができます。
■水温分布図
AZMの熱赤外センサにより、表層水温分布を面的に捉えることができます。人工衛星などで得られる水温分布は、最も細かいものでもASTERセンサの90m/画素ですが、AZMによる観測では1m/画素での調査も可能で、小規模な河川や比較的小さなダム湖等でも水温分布を把握することが可能です。
■濁度/クロロフィル分布図
AZMやCASI-3による可視光域のスペクトル情報は、水中の植物プランクトンに起因するクロロフィルaの量や、懸濁物質による濁度の分布を把握するために有効です。特に濁度の分布については懸濁する物質により解析に有効な波長帯が変化するため、データを取得する段階で波長を細かい区分で取得できることは有効であり、これにより高精度な解析結果が得られます。
水温分布の調査と併せて調査を行うことで、多面的な海象把握に役立てることができます。
